国際食学料理研究家
フードフィロソフィスト
大阪樟蔭高等学校教育アドバイザー
食育ハーブガーデン協会理事長
大阪樟蔭女子大学英文科卒。結婚・育児のかたわら「食」の専門家への道を歩きはじめた。ニューヨークやヨーロッパ、タスマニアなど豊富な海外生活のなかで多くのパーティーコーディネートに携わり、研鑽をつんだ。
2000年、「キッチンカンバセーション」を設立。ワールドワイドなネットワークを生かして、食のプロデュース活動を多角的に展開。
2009年もう一度原点に立ち戻って新たに見つめなおし、未来に向かって歩みだす礎となる「食育ハーブガーデン協会」設立。
「未来に紡ぐすこやかな食と暮らし」を願いとし、食育ハーブガーデンの実施や食育ハーブクッキングなどのボランティア活動を通じて食卓のフィロソフィーを提唱し、全国的な広がりとなる。
2011年よりスタートした、大阪樟蔭高等学校「健康と栄養コース」の教育アドバイザーとして、学科の総合プロデュースを行い話題となっている。
NHK「きょうの料理」や雑誌など様々なメディアでも活躍中。
料理教室「リスタ・クリナリースクール」では世界の家庭料理の紹介とともに、次世代の料理研究家の育成も目指している。
主な著書に「すぐにできる美味しい圧力鍋料理」(誠文堂新光社)、「きれいに暮らす」(プラネットジアース)、「おいしい!楽しい!グッド・ギャザリング」(文化出版局」「おいしいお茶のひと時を…」(旭屋出版MOOK)、「トマト美人のごちそうメニュー」(主婦と生活社)など。
大阪市内は、7月中方々の神社で夏祭りが行われます。その中でも、天神祭は日本三大祭りの一つと言われて、盛大なものです。7月24日は、宵祭り、25日が本祭り。この頃の大阪は最も暑く、この祭りの活気で疫病を吹き飛ばし、無事に夏を過ごせるように人々は祈ったのでしょう。
幼いころの我が家では、夏祭りの支度に家中がウキウキ落ち着かない空気、へっついさんのある台所でたくさんの人が行き交い、朝から八百屋さんが野菜やスイカを届けに威勢良くやって来るし、川魚屋さんは「ええ鱧だっせ!」と祭りタコなどいっぱいの籠をどーんと土間に置いて帰ります。子どもながらその光景が楽しく、夕方になると浴衣に着替え夜店に行くのが嬉しかったものです。
この大阪の夏祭り、天神さんのお祭りに欠かせないのが「鱧」。古語の「食む--はむ」から来た名称で、何でも食べ、強い生命力を持つことから珍重されてきました。京都の「祇園祭り」、大阪の「天神祭り」には「祭り鱧」として好まれて、欠かせないお魚。専門のハモ包丁で小骨を細かく切って、その骨切りした身を湯引きしたすると、ちりちり身が縮れて白い花のようになり、夏の風物詩の一つですね。
満田さんは、この料理法をもう一工夫しました。ハモの皮は硬く、身は柔らかい。この表裏違う質感をもっと美味しく活かせる方は無いかと試行錯誤の結果、生の鱧を真空パックして、その皮目の方へ塩を多めに入れた高温のお湯を何度もかけると、皮の方には完璧に火が通り、身の方には、塩の効いたお湯でも塩気は移らず、冷水にとっても身の方は水に触れないので理想の湯霜ができるというわけです。それから、骨切りをしてお造りでだすのが、「桜会流」。鱧と言えば、梅肉で頂くものですが、「桜会流」は、ちと違うのです。
お造りも普通お醤油でいただきますが、お醤油は液体ですので舌の上に長く残り、お刺身の旨味をころしてしまうこともあるのです。それをお醤油の味がばっと口に広がり、その後に素材の味とかおりが口広がり、その美味しさをしっかり楽しめるにはどうするか、又々、満田さんの研究の結果、お醤油をアガーとゼラチンで泡状にすることに成功。日本料理では画期的なことです。
出来上がった一品は、「鱧のお造り、梅肉と醤油の泡ソース添え」
フランス菓子のように、やさしい可愛い鱧のお造りとなりました。満田さんのセンスと思いが伝わります。
もう一品は豪快に「釜炊き 鱧寿司」
ちょつと強めのすし酢を入れて南部鉄の釜でご飯を炊き上げます。まず、その上に泡立てながら湯煎した半熟のトロトロ卵を作り全体にのせます。その上に、照り焼きした鱧、いくら、刻み柚子を散らします。目に飛び込む色合いに、食本能が反応し、その香りに鼻腔が刺激され、その取り合わせ、鱧、いくら、トロトロ卵と並べば胃がぐうぐう鳴り出しもうたまらないって感じ。
天神祭の頃は大阪が最も暑い時に、暑気払い、元気が出るこの「釜炊き 鱧寿司」の威力は効果あり。威勢良く「わっしょい わっしょい」とみんなで食べたい旨い飯。天神祭は様々な時代をくぐり抜け、その時代の庶民の願いを映しながら、今日も又、大阪人の心の風景になっています。
100年後の大阪人、ひょっとしたら、暑気払いだなんだいいながら、「釜炊き 鱧寿司」を食べているかもしれません。そんなうま~い逸品です。