|
|
|
今、目にすることのできる大阪は、かつての大阪の姿とは大きく異なっている。戦前からの近代化、戦後復興、そして高度経済成長による急速な変化の波は、大阪の利便性を向上させた一方で、かつて大阪が持っていた良い部分を喪失させてしまった。また、全国画一的な近代都市への指向によって、大阪の個性、薫りともいうべき存在感を薄めてしまっている。
単なる懐古趣味に走ることなく、新しい時代の都市・大阪の個性、存在感を高め、人々の感性に訴える「都市の復興」をはかっていかなければならない。 |
|
|
「都市の復興」の方策として、まず果たすべき課題は水路のネットワークの再生ではないか。大阪は古くから「八百八橋」呼ばれる<水の都>であった。川辺や川筋、海辺などの水辺は人々の憩いの場であった。私たちは親水性の高い環境を整備し、誰もが安心してきれいな水と戯れることができる機会を用意することで、<水の都>の再創造は、来訪する人に好印象を与えるばかりでなく、人々の都心居住への回帰を促すことにもなるだろう。
ところで、癒しや憩い、心地よさ、そして美しさなど、これまでの都市計画が目標としてきた快適な都市空間だけではなく、猥雑さやスリルを包括した空間の混沌もまた、都市の大きな魅力である。かつて<水の都>を構成する河原には、繁華な巷がかたちづくられ、多くのエネルギーが集い、交配し、そして滞留する混沌の空間として、都市のもう一方の大きな魅力となっていた。そこで生まれるにぎわいや喧騒、ときに生じる猥雑さが、新しい文化を創造する力へと昇華されていた。<水の都>の創生にあたっては、新たな水辺の巷をうみだしていく基盤を整えることが重要である。
|
|