関西の鍋に「ポン酢」は欠かせない
関東の「すき」。 寄せ鍋のようにダシに味がついている。
所変われば味変わると、昔から言われているが、鍋物に関しても東西で嗜好がだいぶんと違っている。てっちり、魚ちり、カニちりに代表されるように、関西は「ちり」と呼ばれる水炊き文化。それに対し、関東は、すき焼きやカニすきのように、「すき」と呼ばれる寄せ鍋のような味のついた鍋を好む。
この嗜好はポン酢の消費量を見れば顕著に表れていて、少し前までは近畿圏が首都圏の2・.5倍のポン酢を消費していた。つまり、水炊きである「ちり」にはポン酢が必須アイテムなのだ。
柚子、スダチ、カボスの産地が関西から西の地域に集中しているからポン酢を好むのだろうが、関西が水炊き文化になるにはそれだけの理由ではないようだ。
昆布だしとカツオだしの文化の違い
そもそも大阪は良質な昆布が集まる所と言われていた。江戸期には北前船が北国で獲れた昆布を積み、大阪まで運んできた。この昆布を使ってダシを摂とる文化が、関西の和食を育てた。
昆布の持つ旨味成分から出るまったりした味わいは、素材の旨みを引き立てるにふさわしい。だから、鍋物に醤油や味噌で味をつけなくとも十分美味しく味わえたのである。
ちなみになぜ関東で昆布ダシが普及しなかったかは、水にも原因がある。関西の水は軟水で、70〜75℃で昆布の旨みが出る。それに対して、関東の水は関西の水より硬く、炊き出すとエグみが出て、せっかくの昆布ダシがにごってしまう。そのため関東は昆布ダシを多用せずに、黒潮を回流する鰹を獲ってダシを摂ったのである。こういった江戸期の歴史的経緯が東西の食文化に隔たりをもたらしたのだろう。
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