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基本理念の全文|関西・大阪21世紀協会

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基本理念

 21世紀に向かう日本にとって、今日、都市機能の飛躍的充実をはかることは、最大の国民的課題のひとつである。

 今世紀の残り20年の間に、わが国の人口はなお増大を続け、しかも高齢化に伴う社会構成の変化を生じることが予想される。また、資源・エネルギーの供給に限度がみとめられ、他方、国民の生活要求が質的に高度化する中で、産業の活力の維持と、構造変化への対応が緊急に求められている。さらに、日本に期待される国際的責任の増大は、国民ひとりひとりの国際化を要求し、わが国社会が文化的情報の創造能力を高めることを促している。すなわち、今後の日本人は、資源消費の一点では無駄のない効率的な空間を、人間関係の面では互いに助け合い刺激し合う密度の高い社会を、生産の面では高い付加価値を生む知的・情緒的に活力ある環境を、また文化的には伝統と国際性の接点となる世界を、生活の拠りどころとしなければならい。

 まさに、このような条件をみたし、人間活動のさまざまな領域を拡大しうる場所こそ大都市であり、その役割はかつての産業革命の時代にもまして重大となっている。東西に長くのび、文化的な背景も多様なわが国土の中に、拠点となる大都市を配置し、その機能を最大限に発揮させることは、わが国の生存にかかわる歴史的な事業である。そして大阪は、その伝統的な遺産、地理的な位置、現在の経済的・文化的な活力、およびそれが抱えている問題の点から見ても、この国民的事業の先駆的・実験的な役割を担うにふさわしい都市と考えられる。

 歴史の中の大阪は、豊かな自然条件に恵まれ、政治、経済、文化のあらゆる方面にわたって多彩な経験を持つ日本の代表的な都市であった。古代日本の成立した畿内のうち、摂津、河内、和泉三地域をあわせ、海に面した上町台地の上には幾度も首都がおかれたことがあった。この地域は、畿内の大河川の流れをあつめる淀川が瀬戸内海とつらなる接点として、住民のたくましい生活をはぐくみ、その政治的・経済的重要性は、時代がくだるにつれますます大きくなってきた。中世から近世にかけて、まず堺が、次いで大阪が、最初の市民都市として、畿内と全国・海外との幅広い交流の拠点となり、ここに当時にあっては世界有数の一大港湾都市が誕生した。豊臣秀吉の大阪築城は、近世都市成立の象徴であり、日本の歴史にとって画期的なできごとであった。この時期の大阪は、商人・市民の進取の気性に支えられ、また大陸、東南アジア、遠くはヨーロッパとの交渉に基づく国際性に恵まれて、江戸や京都にもまさる豊かな文化を開花させた。江戸に政権が移った後も、大阪は日本の中心都市のひとつとして、最高度の経済的繁栄と文化水準を維持した。歌舞伎、文楽あるいは西鶴の文学に代表されるような芸術から、やがて懐徳堂や適塾に実を結ぶ市民的な学問が、この地を中心にして深い根を下ろしたのであった。

 天下の台所としての経済力は、この地に単に物質的な富をもたらしただけでなく、開放的な気風や旺盛な企業家精神を育て、やがて近代の大都市となる豊かな地盤を培ったのであった。近代の大阪は、産業、経済の先駆的役割を担い、日本各地から参集する人材に勤労と創造的活動の機会を提供しながら、進取の伝統に立って先端的な交通機関、郊外住宅、ターミナルデパートなど現代市民文化の原型をつくりあげてきた。この豊かな大阪に大きな打撃を与えたのは、第一に前大戦の徹底的な破壊であり、さらには戦後復興の過程で見られたいくつかの不幸なひずみであった。大阪は大都市として巨大な人口集中と生産を支える役割を果たしながら、生活、文化、情報にわたる公共的資源配分の点では不利な状況におかれ、また、産業構造の急速な変化への対応にも遅れをとることとなった。その結果、大阪はふるさととしてのかつてのうるおいを失ったばかりか、都市としての多面的な活動を充実させていく経済的余裕をも失っていった。今日の大阪は現代都市に要求されるさまざまな資質において、いくつかの基本的問題を抱えていると言わざるを得ない。

 この自覚に立ってここで、日本全体の将来図に占める大阪の役割をあらためて考えてみたい。まず、大阪に住み、大阪を活動の場とする全ての人びとにとって誇りと歓びを味わえるような都市のデザインとその演出が必要である。そのためには国際的、国民的ニーズをさきどりし、21世紀に向かってそれを花開かせる文化創造活動と施設の充実をはからねばならない。同時に学術、芸術、技術、商品化、市場活動に関する情報の発信能力と、政治、行政に対する政策提言能力のかん養・強化をめざすべきである。さらに、対外的に日本を代表するような交流のための施設及び機関の設置が不可欠であろう。

  こうした都市機能を基盤として、21世紀を展望するとき、とりわけ文化と経済の関わりに注目しなければならない。まず、かつて近世の大阪においても、また戦前の大阪においても、文化の繁栄と活発な経済活動は、つねに車の両輪であった。経済のもっている創造性・冒険性といった力強い活力なしに文化の生き生きとした発展はない。また豊かな文化を背景とする先見性と心の余裕に基づかない経済的発展も持続しない。今後、脱工業化社会が国際化・情報化とともに急速に訪れるとすれば、経済と文化の相互依存は一層強まるばかりか、むしろ人々との文化的志向が経済を牽引する側面が強まることになろう。しかしながら、文化の先端部分や伝統的部分は、明日の文化・経済活動の重要な萌芽であるにもかかわらず、それらは必ずしも今日の産業活動に直接なじむとは限らない。こうした分野にあっては民間の活力と知恵に結びついた公共的な投資が大きな役割を果たすのであり、これこそ戦後の大阪に著しく欠如していたものであった。

 都市基盤の充実、経済活動の増進、文化活動の振興こそ、21世紀に向かっての大阪の目標であり、またそれは日本の将来に対しても大きな寄与をなすものであろう。歴史を振り返れば、古くは15世紀における都市形成、近くは日本万国博が、わが国の経済・社会・文化全般に少なからぬ影響を与えたのは明らかな事実である。

 今後とも大阪は、国際的・創造的都市として有為の人材を吸収・育成し、経済、文化活動の機会と場を広く全国に提供、浸透させていく使命を担っている。大阪が培ってきた政治・経済・文化のあらゆる面における輝かしい伝統を基盤に、われわれのつぎの世代が、生き生きと活動し、生活を楽しむ場として、品格ある理想都市を21世紀に向かって創りあげなければならない。

 「大阪21世紀計画」は、住民、行政、産業界が一体となり、壮大な構想のもとに関西国際空港をはじめ、国際交流や文化活動のための施設の建設に気運を与え、「大阪築城400年まつり」「大阪近代100年記念行事」など国際的、多面的、継続的な大イベントの展開を推進力として、現代的機能の集積都市・大阪を創造しようとする、かつてない総合的プログラムである。

 今こそ大阪人が自らのもつ自由・活力・創造性という本来の美質を発揮し、情熱と誇りを持って新しい大阪のまちづくりに力強い一歩を踏み出すときである。それを21世紀の日本、世界の人びとへの大きな贈りものにしよう。

Copyright(C):KANSAI・OSAKA 21st Century Association