東西に延びる列島の中心近く、豊かな大河が穏やかな海に注ぐ沃野(よくや)に、日本が世界に向けて開く窓となる都がある。難波(なにわ)。それは、神話の時代に生まれてつねに新しく、巨大な城を擁して、その主(あるじ)よりそれを養った住民たちが偉大だった都である。「天下の台所」を営んで国を富ませ、海と陸の道を結んで人々を出会わせ、耳ざとく国の内外の知恵を集めたのは、商いに励み、腕に誇りを持つその住民たちであった。大阪。かって巷(ちまた)の賑わいの中から近松や西鶴を生み、懐徳堂、適塾の精神から近代化の道を見出したこの都は、いま、21世紀をまぢかにして、新しい任務を担っている。21世紀こそ、日本にとって活力ある都市の時代であり、ゆとりと冒険心をあわせ持つ都市民の時代だからである。限られた資源を活かし、知恵と情操から限りない冨を生み、世界のために新しいライフスタイルを実験することが、明日の日本の課題である。この課題に勇敢に迫り、みずから豊かで誇りある生活の場所を作ることが、今日の都市の責任である。かねて住民が主人であった大阪は、まさにそれに適わしい気風を持ち、人材と経験の蓄積に恵まれて、この責任に応えうるであろう。きょう、大阪は、ここに公共と民間の熱意を結集し、この街の経済、政治、文化創造の力量を飛躍的に高め、ひとつの美しく品格ある人間の住みかを作って、歴史への贈り物にしようと決意した。 (1983年10月8日) |