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関西・大阪21世紀協会は「文化力向上」「関西・大阪のイメージ向上」「水都大阪まち育て」の三本を軸に「関西・大阪の文化力向上」を目指します

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鍋よもやま話

空っぽの鍋を囲みながら、鍋について考える―。空鍋談義のはじまり、はじまり。

大阪には様々な鍋がある。「てっちり」「ハリハリ」に始まり、「紙鍋」や「草鍋」など大阪にしかない鍋の専門店も多くある。その昔、大阪商人の町「船場」では、「半助鍋」や「船場汁」が庶民の食事として親しまれていた。
そして、大阪人には“鍋好き”が多いのも事実。大阪と鍋文化の歴史を探るとともに、色々な角度から鍋文化を検証していこう。
まずは、大阪の鍋について、フードプランナーの曽我和弘さんと、「浪速魚菜の会」代表の笹井良隆さんに話しを聞こう。
さらには、大阪の新しい鍋文化を開化させていこう。

鍋よもやま話

笹井良隆
笹井良隆
(「浪速魚菜の会」代表)
「浪速魚菜の会」は、大阪の食材を発掘し、かつてあった大阪料理を再現させるべく立ち上げた特定非営利活動法人。代表理事である笹井氏の仕事は、なにわ伝統野菜の認承など。種苗をもらい、他地へ植えつけるように指導を行っている。その他、発掘した食材の流通の手助けをしたり、イベントの企画を行ったりと多様。朝日カルチャースクールでは、「大阪食文化」をテーマにした講演も行っている。
曽我和弘
曽我和弘
(出版&飲食店プロデューサー)
雑誌「あまから手帖」に籍を置いたのがきっかけで食の世界では評論家的存在に。雑誌などの編集を行う傍ら、食の知識をいかして飲食店のプロデュースを手がけている。JR大阪駅御堂筋口や三ノ宮駅中央コンコースの飲食店プロデュースにも参画した。著作には「関西風味の本」「瀬田亭の魔法のソース」「おはよう朝日ですの本」などがある。

もったいないが大阪の原点 半助鍋と船場汁


半助鍋
半助鍋

曽我:他所にない大阪らしい鍋といえば、「半助鍋」でしょうか。鰻の頭を半助と呼んでおり、かつて「円助」と呼んでいた小銭の半分の値で買えることから、鰻の頭を入れて煮た鍋をそう呼んでいたらしいですね。

笠井:頭といっても鰻の蒲焼きを使うんです。これを豆腐とネギと一緒に炊いたものですね。でも私からすれば、半助鍋は、煮物に近いんじゃないかと思うんです。頭に蒲焼きのタレが塗られており、ここからダシをとるもの。具の種類も少ないために、煮物的要素の方が強いんじゃないでしょうか。そもそも、鍋料理と煮物の線引きも難しいかもしれませんね。大阪人は昔から、捨てるものはないほど、食べ物を大切にするという食文化がありますね。

船場汁
船場汁

曽我:同様に大阪人の“もったいない”という思考から生まれた「船場汁」はどうですか。塩鯖の身と頭、中骨を切り、身は焼いて食べ、残りのアラと大根と一緒に煮たものでしたね。これも、鍋料理というよりは、汁もののようなものだったのかもしれませんが。

笠井:単価が安いことや時間をかけずに食せることで、商家では重宝されたようです。汁といっていますが、私は船場汁のほうが鍋物に近いと思っているんですよ。それに、このダシは汐煮と同じものだと言われていますし。そう言った意味では、いつから鍋料理が始まったのかというのは、難しいところかもしれません。煮物の汁が多くなって、鍋料理に進化したのか、それとも、汁ものの具材が増えて、鍋料理へと変化を遂げたのか。なぞは深まりますね。

各地にある大阪古来の鍋料理


曽我:渡り蟹を使った料理が岸和田から和歌山にかけて多く見られますね。渡り蟹は身は少ないが、いいダシが出ますから、これを入れて作ると美味しいでしょう。

笠井:岸和田のだんじり祭の頃が旬なんて言われていますが、あれは嘘で、むしろその2〜3カ月後の方が美味しいんですよ。

曽我:渡り蟹は、だんじり祭がある9月には値がはね上がっていますが、11〜12月は値も安いですし、その上、味もよくなると一挙両得ですね。

笠井:大阪の鍋といえば“魚すき”が挙げられます。これは「丸萬本家」という店が作ったといわれています。大阪縁りの魚と菜を合わせたものが発祥です。

曽我:大阪人が好む魚というと、フグが挙げられますね。何せ、フグの消費量の大半が大阪府下なのですから。

笠井:フグもいいですが、穴子やハモ、鯛、真名鰹も大阪縁りの魚です。堺の出島漁港で揚がる穴子が特にいいですね。東京や明石のものに比べると、太さがあり、皮が柔らかいのが特徴。にぎり寿司を注文すると、甘ダレが塗ってあるでしょう。あれは大阪のアイデアです。初めはバラ寿司に甘ダレを塗った穴子を使っていたのが、いつしかにぎり寿司に転用されたようです。

穴子
穴子

曽我:私はよく穴子のしゃぶしゃぶを食べるんですよ。ハモと比べると脂が多いので、そんなに量は食べられませんが、脂が乗っている分、ハモより上かもしれません。

笠井:最近、「門真れんこん屋」という店でれんこん鍋を出しているんです。これは地のれんこん農家が郷土料理にしようと目論んで作ったもの。大根おろしと同じようにれんこんをすり込んで、鶏ガラスープで煮るんです。そこへ薄く切ったれんこんを入れてしゃぶしゃぶするんですよ。かつて門真には蓮根(はすね)もちなる料理があったそうですから、これも大阪らしい鍋と言えるかもしれませんね。

曽我:各地でまだまだ知られていない鍋料理がありそうですね。でも、それが昔から伝わる、本当の鍋文化なのかもしれませんよ。そういったものを調べていく価値はありそうですね。

ハモ鍋は秋が一番旨い


ハモ
ハモ

笠井:大阪ならではの食べ物のひとつとして、ハモは代表的な食材のひとつですよね。関西以東では、なかなか手に入らない食材と聞きますが、関西では、スーパーでも売っている日常的な食材です。そこで、私はハモ鍋を大阪の秋の鍋として定着させては、と思っているんです。ハモは祇園祭が旬なんていいますが、あれは京都の人が作った話。本当は11月頃が一番旨いんですよ。

曽我:そうですね。かつて都まで夏の時期に鮮度を保ったまま運ぶ魚がハモしかなかったことから勝手に旬が作られたのですから。ハモは冬眠するので、その前に沢山食べる秋がいいです。本当の旬はむしろ秋の方ですからね。淡路島へ行くと、2〜4kgのハモをしゃぶしゃぶで食べさせてくれるんですが、泉州も淡路島と同じハモを獲っているので、そんな風にして出せばいいんですよ。一般的には800gまでのハモを使うべきだとよく言いますが、本音は太くなれば骨切りが大変だからです。大きなハモは大味ではなく、むしろ脂が乗って美味ですよ。

曽我:笹井さんは「浪速魚菜の会」の代表を務めているので、なにわ伝統野菜には詳しいのでしょう。その中で鍋の具材に使えるものはあるのですか。

笠井:32種類あるなにわ野菜の中で、認証しているのは17種類ですね。悲しいかな、この大半は生産量が少ないのです。でも天王寺蕪や毛間きゅうり、田辺大根、大阪しろな、金時人参の5つは生産量が結構あります。

曽我:このうち鍋に使えそうなものは、田辺大根と大阪しろなですね。

笠井:田辺大根は葉が旨いんです。葉の裏に毛がないので食材として使えるんですよ。

新大阪名物の鍋を作ってみましょう


曽我:ある程度ネタが出揃ったので、新しいなにわ鍋を勝手に考案してみましょうか。

笠井:私は大阪の食の原点は、始末して作ることだと思っているんです。半助鍋しかり、船場汁しかりで、全ての食材を使いつくすのがいいのではないでしょうか。田辺大根や若ゴボウは全てを使えるので、ぜひ用いて欲しいですね。

曽我:じゃあ本当の旬を迎えているにも関わらず、値が下がる渡り蟹でダシを摂りましょうか。

笠井:秋の鍋ならハモをいれてもいいですよ。昆布とハモのアラでダシを摂って、やっぱりポン酢で食べるのが大阪らしいでしょう。

曽我:それならいっそのこと、ハモと穴子のダブルしゃぶしゃぶなんて面白いんじゃないですか。ともに秋には旨くなりますし…。初めはハモであっさりと、後半は脂がのった穴子に切り替えるといった具合に。

笠井:穴子もハモも夏に持て囃される魚なので、その頃はともに値が安いですしね。

曽我:肉類が欲しい人には、河内鴨や犬鳴ポークを使うという手もあります。

笠井:そこまで行くと、具材のオンパレードになってしまうので、なにわ伝統野菜を入れて煮込み、ハモと穴子でダブルしゃぶしゃぶでいいんじゃないかと思うんですよ。

曽我:そうですね。それだけでも十分贅沢ですし、こんな鍋はまだ存在していないでしょうし…。でも、冬ではなく、秋の鍋を考えるところが、お互い変わっているのかもしれませんね(笑)。

曽我:大阪の家庭では、昔から色々な鍋が創意工夫で生まれていたのかもしれませんね。大阪の鍋文化を探る上で、まずは、ダシの文化について調べる必要がありそうですね。てっちりにしても、ハリハリ鍋にしても、まずは昆布から始まるのではないでしょうか。

笠井:確かに、昆布ダシは大阪の食文化を語る上では、欠かせない要素のひとつかもしれませんね。

笹井良隆 笹井良隆
新名物!なにわ鍋
秋に旨くなるハモと穴子をしゃぶしゃぶで食す。ダシは昆布とハモのアラでとる。野菜は旬のものを—。勿論、ポン酢も欠かせない。


ふたりの対談にヒントを得て、次号では、昆布ダシについて探っていこう。

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