耳障りのよい名前で一躍人気料理に
すき焼きと並び、ご馳走鍋料理としての馴染みのあるしゃぶしゃぶの歴史は、約60年前に大阪から、はじまったとされる。
沸いた湯に薄切りの牛肉を“"しゃぶしゃぶ"とくぐらすから「しゃぶしゃぶ」というのが名前の由来。「台所で仲居がおしぼりを洗濯している軽快でリズミカルな動きと音から、初代が命名したんです。当初は敬遠された名前も、耳障りがよく、いつのまにか定着していきました」と話すのは四代目店主の三宅一郎さん。中国の「シュワンヤンロウ」という羊肉を使った鍋にヒントを得たのではないかという説もあるが、定かではない。
スエヒロは、しゃぶしゃぶ創業の店なのだ。そもそも、ビフカツやオムライス、ハヤシライスを扱う洋食レストランとして1910年(明治43年)に創業、今年で101年を迎えた大阪を代表する老舗店だ。その後、ステーキを中心とした牛肉専門店となる。「間口が狭く、奥行きが広い店だったため、末広がりという意味もあり、スエヒロという店名になりました」と三宅さんは話す。
しゃぶしゃぶの誕生は約60年前。戦中、諸外国との栄養事情の違いや体格差を痛感した2代目店主の忠一さんが、高たんぱくで栄養のある牛肉をステーキやすき焼きで提供。しかし、暑い夏でもあっさりと食べやすいようにしゃぶしゃぶを開発した。鍋にすることで野菜もったぷりととれ、一石二鳥。さらに、タレは、ごまだれも栄養面で優れていた。創生期のしゃぶしゃぶのつけだれはごまだれのみで、肉も野菜もごまだれで食した。ごまだれは、スエヒロでは開発当初からごま酢と呼ばれた。「当時は、滋養のある牛肉は病人食だったんです。それほど栄養のあるものとされていました。もっと多くの人に牛肉を食べてほしいと開発したそうです」と三宅さんは誕生秘話を教えてくれた。 |
秘伝のごまだれは見た目よりあっさり。同店では「ごま酢」と呼ばれる。人気は「堂島コース」一人前9450円で前菜3種に、本日の一品、しゃぶしゃぶ、志茂ばしらご飯、香の物、デザートがセットに。肉は黒毛和牛が200gとボリューム満点。
しゃぶしゃぶ専用の特注鍋。 |