元祖・紙鍋発祥の店日本で古くから親しまれている鍋料理は、ダシや味付け、材料、さらには地域によって、その種類は限りないと言われている。土鍋やステンレス鍋の代わりに、銅製金網に貼られた一枚の和紙を鍋として使う、それがこの店の名物・紙鍋だ。 |
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田頭さんの曽祖母に当たるすゑさんが満州で見た料理に創作を加え、この紙鍋を作り出した。今では、他の店舗でも見られる紙鍋だが、紙鍋発祥の店がここである。(江戸時代の文献にも「紙鍋」の文字が存在するが、当時はこんにゃく芋を紙に塗って鍋として使っていたのだとか。現在の形の紙鍋を生み出したのは蘆月である。) 紙鍋とは字の如く、和紙でできた鍋である。はじめて見る人は、紙でできた鍋に驚くことだろう。勿論、特殊な加工が施されてはいるが、特注の金網のザルにのせ、土佐備長炭を使った炭火にかける。水が入っていることで、和紙は燃えない。そしてさらなる利点としては、魚菜からでるアクを和紙が吸い、煮込んでもダシが濁らないため、最後の一滴まであっさりとした味わいのダシが楽しめるというわけだ。 毎朝、その日のお客さん分だけの鍋を作る仕事から1日がはじまるという。「手漉きの和紙を10年くらい寝かせるんです。そうすることで、目の詰まったしっかりとコシのある和紙に育つんです」と話す田頭さん。 | |||
豪華絢爛な鍋の集大成具には鮮魚が7〜8種類、約50種類以上の野菜が華やかに、そして彩りよく盛り込まれる。 |
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「鍋とは言え、和食ですから、季節を感じてもらいたいですね。天下の台所・大阪だからこそ、全国から旨くてええもんが集まってくるんです」と田頭さん。産地にこだわるのではなく、その時、その時の状態を目利きし、納得のいく食材を仕入れているのだそう。「美味しい産地というものは、季節によって変化すると思います。特に野菜は、温度変化によって、旬の産地が変化して当然なんですよ」と田頭さんは言う。厳選した野菜は一種類ずつ丁寧に下処理をしてから供される。「50種類もの野菜があるので、早朝から、職人が仕込んでいるんですよ」。 | |||
じっくりと味わう鍋のフルコースダシは昆布と野菜の旨味だけ。だからこそ、シンプルで品のある味わいが美味。新鮮な魚介類は、タイやエビなど火の通りやすいものから鍋に入れてゆき、火の通ったものから順に食してゆく。糸こんにゃく、粟麩、焼き餅なども次々と加わる。食材の種類が多いため、3時間ほどかけてゆっくりと鍋を堪能する鍋のコースといったところ。 |
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唐辛子を細かく切って日本酒で練った唐辛子を入れるとまた違った味わいになる。玉子を加えて雑炊で締める。 | |||
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