大阪を代表するおでんの名店
大阪のおでんと言えばその名が挙がるほどの名店「花くじら」。冬場ともなると長蛇の列が店頭にずらりと続く。行列を作るのを嫌う大阪人でさえもが、“並んででも、食べたい"と思わせるのが、ここのおでんの最大の魅力とも言うべきか。
店長の高山さんは「特別なことはしていませんよ。ただ、美味しいものをきちんと出したいという思いはあります」と話す。ダシは、厳選した鰹節と昆布がベースになっていて、香り高い。飽きのこない味を追求し、試行錯誤を繰り返しながら、たどり着いた現在のおでんダシは、どこか懐かしさを感じさせながらも、決して家庭では真似のできない奥深い味わいと評判である。
現在、おでんの具材は定番のもので30種類。「創業当時は半分くらいの種類だったんですが、気がつけば今の種類に落ち着きました」と高山さん。注文が最も多いのは定番の大根100円。厚めに切った大根を特製のおでんダシで、じっくりと煮て味をしっかりと含ませる。見るからに柔らかくてジューシーな大根には、七味唐辛子をぱらりとふってアクセントを加える。箸ですっと切れるほどに柔らかい大根は必ず食してほしい一品だ。
国道2号線から少し南へ入ったところに「花くじら」はひっそりと佇む。青いテントに大きな文字で「花くじら」と書いてあるのが「花くじら 本店」。さらにそこから数メートル離れたところにあるのが、今回取材で伺った「花くじら 歩店」である。また、国道2号線の北側には「花くじら 北店」があり、福島界隈で3店舗を構える人気と実力を誇る。その歴史は20年余り。平成元年に本店が開店したのを皮切りに、その約4年後に北店、歩店は平成10年に続々と開店した。
多彩なおでんの具材が揃う
特徴のひとつといえるのが“くじら"のおでん。これが、ここの名物だ。仕込みに6時間ほどかかるそうで、とろとろになったさえずり(くじらの舌)800円やころ(くじらの皮)600円はオツな味わい。「くじらは年々仕入れ価格が上昇しているんですが、くじらのおでんはうちの名物のひとつなので、これからも低価格で出していきたいと思っています」とのこと。10~3月頃までの季節限定のはりはり巻き400円は特に人気がある。たっぷりの水菜をくじらの皮で巻いたもので、シャキッとした水菜の食感を活かすために、注文後ごとに、さっとダシにくぐらせて調理する。ほろ苦い水菜とくじらの皮の旨みがおでんダシによって、見事に調和されている。
くじらのおでん以外にもおすすめのものを聞いてみた。歩店の調理担当の楠本さんによると、「春菊300円は人気が高いですよ。おでんダシに、さっとくぐらせた春菊に山芋のすりおろしたものをかけて、柚子で香りを添え、仕上げにおでんダシをかけます。クセのある春菊の味わいと香りが、まろやかなおでんダシとよく合います」とのこと。他にも、たっぷりの青ねぎとしょうがの入ったねぎ袋300円、豆腐屋で特別に作ってもらっているという厚あげ100円やひろうす200円、白身魚と大豆を練り合わせたUFO100円などがオススメだ。変わった具材で人気を集めているのがチーズロールキャベツ300円。大きめのロールキャベツの中にはとろりとしたチーズがたっぷり入っている。おでんダシとチーズは一見合わないような組み合わせに思えるのだが、意外にも、これがなかなか相性が良い。特に子供や女性客からの注文が多いという。
幅広い年齢層から愛され続ける理由
サラリーマンやOLはもちろん、お年寄りから小さい子供まで幅広い年齢層が席を埋めている。「毎日食べても飽きない味だと言って何度も足を運んでくれるお客さんがいるのはとても嬉しいです」と高山さん。
何気なくおでんを調理している手元をじっくりと見てみると、それぞれの具材の火の通し加減、提供するタイミングなど長年の勘や経験から培われたものに裏づけされている隙のない動作が見てとれる。「特別なことはしてないですよ」と笑う高山さんと楠本さんだったが、その笑顔の陰に隠れるおでんへの愛情をしっかりと感じることができた。
「花くじら 歩店」は1階にテーブルと大きなカウンター席、2階は座敷となっている。予約は6名以上から受け付けている。
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定番から季節のものまで30種以上のおでんの具材がある。
強めの火加減で、ぐつぐつと煮るのが「花くじら」のおでんの特徴。
ねぎ袋やチーズロールキャベツなどちょっと変わった種類のものもある。
カウンターには丁寧に仕込まれたおでんタネがズラリ。
大根や厚揚げなど人気の具材。まずは定番から試してみたい。
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