ダシ:鶏ガラスープ、牛乳 鶏肉やたくさんの野菜を、牛乳を加えたダシで煮ながら食す鍋。ベースは鶏ガラスープで、味付けに少量の白味噌、醤油、砂糖を加えて、煮立てたところに具材を加える。醤油などの調味料は、家庭や飲食店などで使い方が異なり、それぞれ好みの味に仕上げられる。 具材が煮えたら、最後に牛乳を加えてさらに煮込むが、このとき沸騰させないようにするのが、おいしく作るポイント。また、始めから、鶏ガラスープに調味料と牛乳を加えたダシで、具を煮ながら食べる場合もある。 コクのあるダシの味をひきしめるのが、ショウガ汁やおろしショウガ。鍋に直接加えたり、薬味として七味唐辛子などとともに添えられる。食べるときには、生卵にくぐらせたり、ダシごと器にとって薬味を入れて食べる。 鶏ガラスープと牛乳の割合は3:7くらいが目安といわれているが、決まりはなく、好みに合わせて作られる。白味噌、醤油、砂糖、ショウガなどが加わることで、洋風の牛乳鍋とは少し趣が異なる和風の鍋に仕上がる。鶏ガラスープの旨味や、ショウガの香りで牛乳が苦手な人にも食べやすい。 具材は、鶏肉を中心に、白菜、白ネギ、シュンギク、シイタケなどの他、牛乳と相性のよいジャガイモ、ニンジン、ホウレンソウなども加わる。さらにハルサメや豆腐など、鍋料理の定番食材が多い。シメにはうどんやモチ、雑炊を楽しむのがオススメ。 牛乳が日本に伝わったのは、今から1300年以上前の飛鳥時代に、唐(中国)から伝わったといわれている。唐の使臣が、現在の練乳に似た乳製品を天皇に献上し、それが喜ばれ、後に乳牛が宮中で飼育されるようになったと言われている。また、唐からの帰化人は、唐風の鶏肉料理を広めたとされる。どちらも、とても貴重なものとされ、牛乳は薬として、鶏肉料理は嗜好の珍味として、貴族だけが楽しむものだった。 一方、同じ頃に多武峰(とうのみね)で修行に励んでいた僧たちが、苦行の厳しさに耐えかねて飛鳥の里に牛乳を飲みに度々やってくるようになった。そして、いつの頃からか修行僧たちが、力をつけるために鶏肉を牛乳で煮て食べることを考え出した・・・というのが一つの説として伝わっている。 しかし、薬にされる程、貴重な牛乳をたくさん使った鍋が飛鳥時代に作られたかどうかは定かでない。また、一方で、大正時代に国の役人が飛鳥へ訪れた際に、食材がなくヤギの乳と飼っていた鶏の肉でもてなしたのが始まりという説もある。 飛鳥の里の農村に伝わる料理法を、昭和に入ってから橿原観光ホテルが郷土料理として復活させ、現在でも冬の名物鍋として提供されている。飛鳥地方の民宿や飲食店で食べられる他、イベントや祭でふるまわれることもある。また、飛鳥地方では家庭でもよく食べられているという人気の鍋である。 <主な具材> 鶏肉 ・材料を食べやすい大きさに切る ・牛乳を加えたら、煮立たせないように注意する |