第21回毒性評価国際シンポジウム(ISTA21)
事業報告
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写真紹介:参加者の集合写真
写真提供:ISTA21実行委員会 - 教育、学術に関する国際的な活動 環境汚染の解決に向けて、毒性評価に焦点を当て、最新の研究成果を世界各国から持ち寄り議論します。複数の一般セッションと特別セッション「毒性評価とその環境/生態学的妥当性」を開催し、未解決課題の克服に向け討議します。水俣を訪れて公害の原点・水俣病の歴史を辿り、胎児性患者の語り部のお話から教訓を学びます。
開催期間 | 2024年08月25日~2024年08月30日 |
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開催地 | 福岡県福岡市 |
アクセス | |
助成決定金額 | 700,000 |
連絡先 | |
ホームページ | https://ista21-fukuoka.jp/ |
第21回毒性評価国際シンポジウム(ISTA21)では、毒性評価に関する複数テーマの一般セッションを設けて、水棲生物及び陸棲生物に対して様々な環境因子(化学因子及び物理因子)が及ぼす毒性を、遺伝子や細胞レベルから個体、個体群、さらに群集レベルで評価することに焦点を当て、最新の知見を世界各国から持ち寄り、論議した。同時に、生物学や化学の基礎知見の獲得と、その新奇毒性評価手法への応用にも挑戦を試みた。ISTA21には、日本を含む、21の国や地域(注1)から135名(国外63名、国内72名)の研究者が参加した。ISTA21では、将来の毒性評価・環境科学分野を担う若い研究者、すなわち、学生の参加を奨励すべく、学生の参加費を安く設定した(その一方、一般参加費をやや高めに設定した)。結果的に、49名の学生(参加者に占める割合は36.3%)の参加を得ることができた。また、ISTA21では6名の研究者(注2)を招聘し、基調講演並びに招待講演を行った。ISTA21における研究発表の総数は123件(基調講演並びに招待講演6件の他、口頭発表62件とポスター発表55件)であった。台風10号の九州への接近及び上陸のため、特に8月29日及び30日のプログラムに変更を余儀なくされたが、幸いにも大きな混乱はなく、ほぼ全てのプログラムを実施することができ、盛会裏に終了した。ISTA21閉会後、「Thanks a lot for organizing ISTA 21! It was a great conference, despite all the obstacles.」など、ISTA21の開催とご自身の参加を喜び、感謝する、参加者からのメールがISTA21実行委員会に複数寄せられている。
また、ISTA21では特別セッション「毒性評価とその環境/生態学的妥当性」を開催し、毒性評価分野における未解決の課題の克服に向けて議論し、新たな知見の獲得を目指した。具体的には、実験室で得られる知見と野外で観察される現象との間に時に乖離がみられる点(北九州市山田緑地で1997年~2000年に観察されたヤマアカガエルの過剰肢や福島第一原子力発電所南側(大熊町夫沢)で2017年4月以降に観察されているイボニシの通年成熟現象)や、環境基準等を検討する際に必要となる、有害物質等が個体群あるいは群集レベルで及ぼす影響の評価方法に焦点を当てて、現実の問題(東京湾における1990~2000 年代の底棲魚介類生物相の急変要因の推定)に照らして論議した。なお、特別セッションにおける相馬明郎・大阪公立大学教授の招待講演"An assessment model of toxic chemicals integrating benthic-pelagic lower ecosystem and the lower-higher trophic food web"によって新たな視点が提供されたとして、複数の参加者から相馬教授に対して個体群及び群集レベルでの物質循環や生物影響の解析・評価のための共同研究の打診が寄せられており、ISTA21の発展的成果の一つと言えよう。
一方、エクスカーションでは、水俣市の百間排水口、坪段、茂道などの水俣病と関わりの深い歴史的な場所を訪ねた。参加者は、現地を実際に歩くことによって、海の豊かさの背景に山の豊かさが関係していることを知る機会を得ることができた。さらに、胎児性水俣病患者である坂本しのぶさんを語り部として迎えて話を伺い、これらを通じてその教訓を改めて学んだ。
なお、プログラム及び要旨集はISTA21ウェブサイトからダウンロード可能であるため、適宜、ご参照いただきたい(https://ista21-fukuoka.jp/ )。
(注1)参加者の出身国・地域:
アゼルバイジャン、アメリカ、アルジェリア、エストニア、カナダ、韓国、ギリシャ、スペイン、台湾、中国、日本、ノルウェー、バングラデシュ、ブラジル、フランス、ベトナム、ポーランド、香港、リトアニア、ルクセンブルグ、レバノン(五十音順)
(注2)招聘研究者:
Dr. Cinta PORTE (Institute of Environmental Assessment and Water Research, Spain)
Dr. Nathaniel SCHOLZ (NOAA Northwest Fisheries Science Center, U.S.A.)
Prof. Xuchun QIU (Institute of Environ. Health and Ecol. Security, Jiangsu University, China)
相馬明郎教授(大阪公立大学、日本)
Prof. Markus HECKER (University of Saskatchewan, Canada)
Prof. Ruth SOFIELD (Western Washington University, U.S.A.)