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関西・大阪21世紀協会は「文化力向上」「関西・大阪のイメージ向上」「水都大阪まち育て」の三本を軸に「関西・大阪の文化力向上」を目指します

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うどんすき

縄文時代から続くクジラの食文化

昭和42年、千日前に創業した「徳家」。ミナミの有名女将である大西睦子さんが黒門市場の魚屋の次男だった旦那さんとの結婚を期に、地元・ミナミにクジラ料理のおばんざいの店を始めたのは24歳の時のことだ。「7坪ほどの小さい店から、はじまったんですよ」と大西さん。ここの名物鍋となっているのが、大阪では馴染みの深い、水菜とクジラのハリハリ鍋だ。
大阪人とクジラの歴史は長く、縄文時代にまで遡る。太平洋を回遊するクジラは和歌山でとられ、大阪にもやってきた。ハリハリ鍋は大阪・和歌山の郷土食として親しまれた庶民の味だった。「食用だけでなく、ひげはテニスのガットやコルセットなどにも使われました。血は畑で使う除虫剤として有用だったようです。クジラは日本人にとって、日常不可欠なものだったんですよ」と大西さんはクジラの大切さを語る。
徳家では、赤身ではなく、当時、上ものだった尾の身のみを使ったハリハリ鍋を出していた。クジラの味が存分に楽しめるように、薄味のダシの開発に心血を注いだのだそう。また、お酒のアテとしても合うように、改良に改良を重ねたのだという。毎朝、中央市場まで足を運んだ甲斐もあって、口の肥えた大阪人の舌を唸らせ、一躍人気店として成長した。 創業時、クジラは肉類の中でも最も安く、庶民のたんぱく源として人気だった。一方、水菜は大阪を代表する冬野菜のひとつであり、ビタミンA、Cが豊富で、風邪の予防にも最適だ。また、ポリフェノールが肌の新陳代謝を高めるので、美肌にも効果がある。「ミナミにもまだ畑があって、湊町の向こうには水菜が山ほど生えていたんですよ。冬が旬の水菜とクジラのハリハリ鍋はビタミンも、たんぱく質も豊富で、身体も温まります」。

消えゆくクジラ肉

クジラを取り巻く環境が激変するのは、調査捕鯨が始まった今から23年ほど前のこと。学校給食などでも親しまれていた竜田揚げなどのクジラ料理が姿を消してゆく。そこから女将の苦難と戦いが始まった。「創業時、尾の身のみのハリハリは400円でした。あの頃は"コロ“も今と比べると驚くほど安いものでした。赤身よりも安いくらいでした。まさに庶民の味だったんです」と大西さんは振り返る。コロとはマッコウクジラの皮を煎り、天日に干したもののこと。黒門市場では、トロ箱に入れて積まれていたほどあったコロも、現在での流通量は、全国でたった年間一頭分だけだという。そのため、希少さゆえに高価なものとなり、手のひらサイズで5000円を超えるほどになってしまった。「コロは米のとぎ汁で戻すんです。先人の知恵が消え行くのが哀しいですね」と大西さんは嘆く。

 同じように、今では希少な食材となってしまったさえずり(クジラの舌)も、以前はとても安いものだったそう。22年前と比べると10倍近く値段が上がっているという。「これも、いいダシを出すんですよ。戻し方が少し手間なので、家庭ではあまり使われていませんでした。料理屋ならではの食材でしたね」と話す。実は、さえずりを食べるようになったのはここ20~30年の話。大西さんがさえずりの美味しさを伝えたとも言われている。

ハリハリとした食感を楽しむ鍋

「主役は水菜です。文字通り、ハリハリとした食感が醍醐味。水菜のホロ苦さには、クジラのダシが一番よく合うんです」と大西さんは言う。ハリハリ鍋の名前は水菜の食感に由来している。
徳家のハリハリ鍋は、鯨肉に片栗粉をまぶし、湯通しをした状態で提供される。それを鍋に入れると、衣がダシを存分に吸い込み、旨みを閉じ込める。さらに、炊いても固くならないようにする工夫なのだそう。
昆布とたっぷりのカツオでダシをとり、薄口醤油で味を整える。意外な隠し味となっているのがメキシコ原産のハラペーニョ(唐辛子)で、臭みを消し、すっりと爽やかな後味を作り出す。「辛さを感じるほどは入っていません。だからこそ、隠し味なんですよ。スープの味を引き締め、より一層美味しくなるんです。でも、直接噛んでしまうととても辛いので、気を付けてくださいね」と大西さん。
具は、クジラとたっぷりの水菜、豆腐、シイタケ、餅、貴重なおばコロ(ヒレのコロ)のみ。「余計なものは入れません。クジラと水菜の味を邪魔しないものだけです」と大西さん。水菜は文字通り、ハリハリとした歯ごたえと食感が命なので、煮えすぎないように、食べる分だけを少しずつ入れていくのがいいだろう。 シメには細うどんがいい。旨味たっぷりのダシを最後まで堪能できる。
他にも、クジラを使った一品料理や、てっちりやくえちりなど、大阪を味わえる鍋料理も揃っている。中でも人気なのが、ひげクジラの背中の皮をほとほとと炊いたもちクジラという一品。酢味噌をつけて食すのだが、クジラのコクのある独特の風味がたまらなく、クセになると評判。
「44年前の創業以来、通い続けてくれているお客さんもいるんですよ。子供や孫達にこの味を伝えていきたいと言ってくれる言葉が一番嬉しいんです。大切な大阪の味を守っていきたいですね」と大西さんは締めくくった。


ハリハリ鍋一人前3700円。


「この数十年で、瞬く間に鯨は贅沢な味になってしまいました。鯨料理は語り伝えるべき大阪の食文化です」と話す大西さんは、日本人の食文化を守るためにも色々活動の先頭に立って奮闘している。


ダシは昆布とたっぷりのカツオからとる。クジラの旨味も加わって、奥深い味わいが生まれる。


水菜は食感が大切なので、食べる分だけを少しずつ入れるのがいい。


シメには細うどんを。


クジラの表面には片栗粉がまぶされ、旨味を閉じ込めている。


 店内に飾られているクジラの絵。

大阪市中央区千日前1-7-11
月~金16:00~23:00、土日祝12:00~23:00 / 無休
地下鉄各線難波駅、堺筋線日本橋駅より徒歩5分
TEL:06(6211)4448 
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