大阪府、大阪市及び公益財団法人関西・大阪21世紀協会では、芸術文化活動の奨励と普及を図り、大阪の文化振興の機運を醸成することを目的に、大阪府内で上演された公演の中から優れた成果をあげたものに対して「大阪文化祭賞」を贈呈しており、今年で51回の開催となります。
今年度からは、従来の5・6月開催公演のエントリー制を改め、年間を通して大阪府内で開催された公演を対象に、(ただし、平成26年度は5月から12月の8ヵ月を対象)独創性に富み、企画・内容・技法が総合的に優れていること等について厳正な審査をした結果、各賞を決定いたしました。
また、3月 10日(火)には平成26年度大阪文化祭賞 贈呈式が開催され、最優秀賞を受賞された、舞扇会 主催 山村流六世宗家 山村友五郎様、四代目山村若様、また、奨励賞を受賞された関西弦楽四重奏団様による受賞者記念公演が行われました。
各賞の受賞者は以下の通りです。
大阪文化祭賞最優秀賞
■舞扇会 主催 山村流六世宗家 山村友五郎
「三代目山村友五郎・四代目山村若 襲名披露舞扇会」の成果
大阪文化祭賞優秀賞
■維新派
「透視図」の成果
■いずみホール
「いずみホール・オペラ2014 歌劇 フィガロの結婚」の成果
大阪文化祭賞奨励賞
■第24回上方歌舞伎会出演者一同
「第24回 上方歌舞伎会」の成果
■林家花丸
「林家花丸独演会~人と人、情と情」の成果
■安積瑠璃子
「大阪バレエ・カンパニー公演『海賊』」における主役メドーラの成果
■関西弦楽四重奏団
「関西弦楽四重奏団」演奏会の成果
※副賞賞金として、当協会から大阪文化祭賞最優秀賞50万円、大阪文化祭賞優秀賞15万円、大阪文化祭賞奨励賞5万円をそれぞれお贈りします。
※各受賞者の受賞理由・略歴等は以下資料をご参照ください。
大阪文化祭賞最優秀賞(1件)
舞扇会 主催 山村流六世宗家 山村友五郎
「三代目山村友五郎・四代目山村若 襲名披露舞扇会」の成果
(第1部門:伝統芸能・邦舞・邦楽)
山村流六世宗家が流祖の名跡山村友五郎を120年ぶりに復活して三代目を襲名し、長男侑の四代目若襲名と合わせて披露する記念の舞踊公演「舞扇会」を平成26年9月に3日間計6公演、国立文楽劇場で開催した。流儀の一門ばかりか花柳壽輔や井上八千代ら日本舞踊界を代表する各流家元も招いて、“邦舞の祭典”ともいえる花も実もある舞台を展開したことは、上方舞のよさを一般に広く再認識させるとともに、とかく沈滞ぎみな大阪の伝統文化を活性化し、将来に向けて明るい道筋を切り拓く上で、意義深いものであった。よってこの「舞扇会」の成果に平成26年度大阪文化祭賞最優秀賞を贈る。
三代目友五郎は昭和39年大阪市出身。山村流に江戸時代より伝わる座敷舞と歌舞伎舞踊の二つの流れを大切にして、伝統ある上方舞の継承に力を注いできた。平成22年には芸術選奨文部科学大臣賞受賞。一門の指導育成に加えて、東京の舞踊家と「五耀会」公演を定期的に開催。上方歌舞伎や文楽、宝塚歌劇の振付、舞踊指導など多彩で意欲的な活動は全国的にも注目される。いままさに旬の人である友五郎の今回の受賞は大阪に根づいた伝統文化の他ジャンルにも多大な波及効果が期待される。
【略歴】本名 山村武 昭和39年4月大阪に生まれる。祖母・四世宗家若や母・糸のもとで幼少より修業。早逝した母に五世宗家を追贈し平成4年1月、六世宗家山村若を襲名した。同18年には「山村流創流二百年舞扇会」を開催。同26年7月10日、三代目山村友五郎を襲名。披露目の舞踊公演「舞扇会」を同年9月26日から3日間にわたり大阪で開く。主な活動は毎年、山村流舞踊会として「舞扇会」を主宰するほか、一門の育成指導、歌舞伎、文楽、宝塚歌劇などの振付、舞踊指導にあたっている。国立文楽劇場養成科講師、宝塚歌劇団日本舞踊講師、大阪芸術大学舞台芸術学科非常勤講師。 [受賞]平成3年 大阪文化祭奨励賞受賞、平成13年 文化庁芸術祭新人賞受賞、平成15年 舞踊批評家協会新人賞受賞、平成18年 芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞、平成19年 文化庁芸術祭優秀賞受賞、平成20年 日本舞踊協会 花柳壽應賞新人賞受賞、平成21年 大阪文化祭賞受賞、平成22年 芸術選奨文部科学大臣賞受賞、ベスト・ファーザー賞 in 関西、平成26年 日本伝統文化振興財団賞受賞
===================================================================
大阪文化祭賞優秀賞(2件)
維新派
「透視図」の成果
(第2部門:現代演劇・大衆芸能)
昭和45年の旗揚げ以来、役者、スタッフが公演毎に自らの手で野外に大規模な特設舞台を造り、関西野外劇の雄の冠を頂いてきた維新派。近年は海外や他府県での公演が続いたが、10年ぶりに本拠地・大阪に帰ってきた。
今回、舞台を組んだのは明治期の大阪開港の地、現在「水都大阪」のシンボル空間になっている中之島GATE。病室から大阪の街を思う少年と沖縄生まれの祖母を持つ少女2人を主人公に、都市の記憶を維新派独自の変拍子にのせた大阪弁のせりふの中に描いた。高層ビル群を遠景に、約40人の役者が維新派独自の言語スタイルとリズム、動作、野外劇場ならではの自由さで、外部のノイズさえも作品の一つに取り込み、維新派ならではのテイストを盛り込んだスケールの大きな美しい舞台を作り上げた。野外劇にこだわった唯一無二の存在、独創的で完成度の高い作品の成果に加えて、維新派の公演ではおなじみの屋台村の賑わいづくりも、高い支持を集めた。
【略歴】関西を拠点とし、主宰・脚本・演出をつとめる松本雄吉を中心に、さまざまな場所で公演を行う。「移民」や「漂流」をキーワードにして、昭和45年の創設以来、一貫してオリジナル作品を上演している。特に、野外に自らの手で巨大劇場を建設するという手法は、国内外から注目を集めている。代表作に、野球グラウンドを全面使用した『さかしま』(平成13年)や、びわ湖上に舞台を作った『呼吸機械』(平成20年)、また『MAREBITO』(平成25年)では、瀬戸内海の島々を借景に岡山の離島、犬島で地球や人類の歴史と未来を描いた。平成12年以降は、ヨーロッパやアジアなど、海外の公演も多く行っている。平成27年は奈良県曽爾村での野外公演を予定。 [受賞]平成14年 第2回朝日舞台芸術賞受賞
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
いずみホール
「いずみホール・オペラ2014 歌劇 フィガロの結婚」の成果
(第3部門:洋舞・洋楽)
結婚式を控えたスザンナ(石橋栄実)とフィガロ(西尾岳史)のコミックなコンビが秀逸で、愛の死を嘆きながらケルビーノ(向野由美子)にゾッコンのアルマヴィーヴァ伯爵夫人(澤畑恵美)と、初夜権の復活を狙う伯爵(黒田博)が女性陣の反撃で罰せられるプロットは今も説得力がある。脇にも歌唱力のあるキャスト(福原寿美枝、折江忠道、清原邦仁、四方典子、晴雅彦)を集めた。河原忠之の指揮はザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団を駆りたて、ダ・ポンテ喜劇のテンヤワンヤをモーツアルトの音楽に乗せておもしろおかしく聴かせる。粟國淳の演出はオケの後方に仮設した奥行きの浅い舞台を横長に使い、現代服の登場人物をグループに分けてバランスよく配し、入り組んだ人間関係を視覚的に整理して、ホールの特性を生かした活気のある舞台作りに成功した。コンサートホールでのオペラ上演の可能性を追求する企画の成果は顕著で優秀賞にふさわしい。
【略歴】いずみホールは平成2年の開館以来、音楽ディレクターに礒山雅(音楽学者:国立音楽大学招聘教授)を迎え、音楽による社会貢献と関西・大阪からの音楽文化発信をめざし、年間約30の主催公演を開催している。「いずみホール・オペラ」シリーズは重要な柱の一つで、クラシック音楽専用ホールの特性を生かした「音楽そのものが主役」のオペラ上演を追求している。関西の歌手の紹介にも重点を置いてきた。シリーズのプロデュースはこれまでに湯浅卓雄、釜洞祐子、岩田達宗、河原忠之が歴任し、上演スタイルは演奏会形式からセミ・ステージ形式へと変化を遂げている。
[受賞]平成17年「カルメル会修道女の対話」音楽クリティック・クラブ賞受賞、平成22年「オルフェオとエウリディーチェ」 第9回三菱UFJ信託音楽賞 奨励賞受賞
===================================================================
大阪文化祭賞奨励賞(4件)
第24回上方歌舞伎会出演者一同
「第24回 上方歌舞伎会」の成果
(第1部門:伝統芸能・邦舞・邦楽)
上方の若手歌舞伎俳優の育成を目的とする夏恒例の公演。昨年は『信州川中島合戦』より「輝虎配膳」と『義経千本桜』の「椎の木」から「鮓屋」までを上演し、例年を上回る成果を上げた。それぞれが全身全霊で難役や大役に挑み、緊張感漂う人間ドラマを展開。義太夫狂言の台詞回しに進歩を感じさせつつ、観客を作品世界に引き込む舞台を作り上げた。出演陣と指導陣の熱意や奮闘を称え、今後のさらなる成長への期待も込めて奨励賞を贈る。
【略歴】昭和55年より開催された若手俳優による勉強会「若鮎の会」を前身とし、上方歌舞伎の伝統の継承及び若手俳優の技芸向上を目的として、平成2年より毎年7~8月に国立文楽劇場が主催している公演。平成26年までに計24回の開催を数える。幹部俳優の熱心な指導のもと、普段の公演では演じることの無い大役に挑戦している。
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
林家花丸
「林家花丸独演会~人と人、情と情」の成果
(第2部門:現代演劇・大衆芸能)
50歳の節目を前に、初めて「独演会」と銘打った会。その並々ならぬ意気込みが存分に発揮された。人情をテーマにした2席のうち「厩火事」は、揺れ動く女心を巧みに演じ、サゲの工夫も秀逸。師匠染丸の十八番「幸助餅」は、相撲道楽で身を崩す幸助の復活劇をドラマチックに描き、感極まって涙する客も。師匠譲りの本格派として確かな力量を感じさせた。繁昌亭大賞、文化庁芸術祭優秀賞に続く受賞。この勢いで今後の活躍を期待したい。
【略歴】昭和40年生まれ、兵庫県尼崎市出身。桃山学院大学社会学部卒。 平成3年4代目林家染丸に入門。独自の感性で滑稽噺や人情噺に新たな工夫を加え、落語ファンのみならず幅広く観客に支持されている。 [受賞]平成11年 新進落語家競演会新人賞受賞、第36回なにわ芸術祭落語部門大阪府知事賞、同大阪市長賞受賞、平成22年 繁昌亭爆笑賞受賞、平成26年 繁昌亭大賞受賞、 文化庁芸術祭 大衆芸能部門 芸術祭優秀賞受賞
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
安積瑠璃子
「大阪バレエ・カンパニー公演『海賊』」における主役メドーラの成果
(第3部門:洋舞・洋楽)
天性のものと思わせる華やかさに舞台ごとに磨きがかかるバレリーナ。特にこの『海賊』の主役メドーラでは、ロシア、ワガノワ・バレエ・アカデミー留学でブラッシュアップされたバレエの基礎のもと、日本人離れした高身長、長い手脚を活かし、ジャンプや回転等高い技術も駆使し、伸びやかにスケールの大きな踊りで観客を魅了。コミカルな場面は歌うように楽しげに表現。登場するだけで、舞台を輝かせる大型新人であることを強く感じた。
【略歴】平成18年 日本バレエ協会関西支部バレエ芸術劇場で主役に抜擢される。 ロシア国立ワガノワ名称ロシアバレエアカデミーに留学し、リュドミラ・V・コワリョワに師事。帰国後、カンパニー公演、芸術劇場などで主要な役を務める。 [受賞]平成13年 OsakaPrix第2回クラシックバレエコンクールジュニア2部 第1位、 平成16年 OsakaPrix第5回クラシックバレエコンクールジュニア1部 第1位、 平成17年 第15回全国バレエコンクールin Nagoya ジュニアC部門 第1位
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
関西弦楽四重奏団
「関西弦楽四重奏団」演奏会の成果
(第3部門:洋舞・洋楽)
日本のオーケストラの第一線で活躍する4人が、弦楽四重奏に恒常的に取り組んでいこうという決意を鮮明にした演奏会。バルトークでは4人の覇気をぶつけ合い、ブラームスでは作品に込められた叙情と精巧な構造を感性の鋭さと技術の確かさで丁寧に浮かび上がらせた。作曲家にとって重要な作品ジャンルである弦楽四重奏だが、日本で常設の四重奏団はそう多くない。互いに音楽性を認め合う4人が進むこれからに期待を込めて。
【略歴】関西弦楽四重奏団 Kansai String Quartet
ヴァイオリン:林 七奈(大阪交響楽団コンサートマスター)、田村 安祐美(京都市交響楽団)
ヴィオラ:小峰 航一(京都市交響楽団首席)
チェロ:上森 祥平
現在日本のオーケストラのコンサートマスターや首席奏者として、あるいは数々の室内楽コンサート等でも活躍する第一線のプレイヤー達が弦楽四重奏へのひときわ強い情熱と強い意志を持って平成24年に結成した新鋭の弦楽四重奏団。気鋭の音楽家たちによる強い情熱の発露である関西弦楽四重奏団が音楽界に新たな活力をもたらすものとして期待される。